MBAなんて知らなかった私が挑戦を決めるまで
正直に言うと、私は社会人になるまでMBAという存在をよく知りませんでした。「なんかエリートが行くビジネススクールらしい」「海外で勉強するらしい」程度の認識で、それが自分のキャリアにどう影響するのか、具体的に考えたこともありませんでした。
そんな私がMBAを本気で目指すことになったのは、社内で海外事業に携わる先輩方の話を聞いたのがきっかけです。世界を舞台に活躍する彼らの姿を見て、「自分もこんなふうに成長したい」と思うようになり、気づけば社内選考へのチャレンジを決意していました。
しかし、ここからが本当に大変でした。MBA受験は「長期戦」。仕事と勉強の両立、スコアメイクの苦悩、志望校選びの迷走……。振り返ると「もっと早く準備をしておけばよかった」と思うことも多々あります。この記事では、私のMBA受験のリアルな体験を共有します。これから挑戦する方の参考になれば嬉しいです!動機については前回の記事で詳しく記載しているので是非こちらもご覧ください。
まずは社内選考の関門を突破せよ
書類審査:MBAが必要な理由を明確に
社内選考の書類審査では、「なぜMBAに行く必要があるのか?」が徹底的に問われました。単に「学びたい」「成長したい」といった抽象的な動機ではなく、具体的なキャリアのビジョンと、その実現に向けてMBAが不可欠であることを論理的に説明する必要がありました。特に重視されたポイントは以下の通りです。
現在の自分と将来のキャリアの乖離を明確に
企業がMBA派遣を支援する以上、「なぜ今のキャリアでは十分ではないのか?」という問いに明確に答える必要がありました。私はエンジニアとして技術を磨いてきましたが、事業の意思決定や経営戦略の視点を持たないままでは、将来的に海外事業に貢献するうえで限界があると感じていました。具体的には以下のような課題を整理しました。
- 技術職としての経験は豊富だが、事業戦略の策定やマネジメント経験が不足している
- 海外展開を推進する上で、現地市場の理解や異文化間の交渉スキルが求められるが、それを学ぶ機会がない
- 現在のポジションでは部分最適の視点になりがちで、会社全体の経営方針や意思決定に関与する機会が少ない
これらの課題を具体的に言語化し、「現状のままでは会社の成長に十分貢献できない」というストーリーを作りました。
MBAで何を学び、それをどう活かすのか?
MBAは「なんとなく学びたい」では意味がなく、何を学び、それをどう活かすのかを明確にすることが不可欠でした。そこで、以下のようなポイントを整理しました。
- 経営戦略・ファイナンス・マーケティングなど、技術者としての経験だけでは得られないビジネススキルを体系的に学ぶ
- 多様なバックグラウンドを持つクラスメートとのディスカッションを通じ、グローバルな視点を養う
- 現地企業とのプロジェクトを通じて、実践的に海外市場での事業展開のノウハウを身につける
これらを通じて、MBAが単なる学びの場ではなく、自分のキャリア課題を解決するために不可欠な環境であることを強調しました。
会社への貢献がどう高まるのか?
MBA派遣を受ける以上、「会社にどのような利益をもたらすのか?」を明確にすることが求められました。ここで重要なのは、MBAで得た知識やスキルを、帰国後に具体的にどのように活用するのかを示すことです。私は以下のような形で整理しました。
- 海外プロジェクトのマネジメントに関与し、技術と経営の両面から戦略立案を行う
- 海外市場でのビジネス展開を主導し、新規事業の立ち上げに貢献する
- グローバルなビジネス環境に適応できる人材として、組織内の国際化を推進する
これらを具体的な数字や事例、経営計画を交えて説明し、「MBA派遣が単なる自己成長ではなく、会社の成長にも直結する投資である」ことを強くアピールしました。
二次面接:最大の難関、役員対話
一次選考を突破し、いよいよ二次面接。ここが最大の難関でした。 面接官は役員クラスの重鎮たち。彼らは単なる形式的な質問ではなく、徹底的に「本当にMBAに行く価値があるのか?」を問い詰めてきました。論理の矛盾や覚悟の甘さを見抜こうとする鋭い視線。まさに「MBA留学は会社の投資に値するのか」を試される場でした。特に印象的だったのは、次のような問いでした。それぞれの質問の意図を考えながら、必死に論理を組み立て、回答しました。
「MBAに行かなくても成長できる方法は?」
「自己成長はMBA以外でも可能なのでは?MBAに頼る必要があるのか?」
「確かに業務経験を積むことで成長する方法もあります。しかし、MBAで得られる体系的な知識、世界中の優秀な人材とのネットワーク、そして短期間で圧倒的に成長できる環境は、独学や実務経験では得られません。」
「MBAじゃなくても成長できる」という前提に同意しつつ、「しかしMBAでしか得られない価値がある」と強調しました。世界中の優秀な人材とのネットワークは、単に知識を得る場としてだけでなく、新たなビジネスチャンスやパートナーシップの機会を生み出す可能性があります。これは、業務の延長線上で築く関係とは異なり、より多様な視点や最先端のビジネス知識に触れられる点で大きな差別化要因になると考えました。
「もし社内選考に落ちたらどうする?」
「本当にMBAに行きたいのか?それとも、会社の支援があるから受けているのか?」
「仮に選考に落ちたとしても、自費でのMBA留学も視野に入れています。それほどMBAでの学びに価値を感じています。しかし、会社の支援があれば、より大きな貢献が可能です。」
単なる「MBAに行きたい」ではなく、「どんな状況でもMBAを目指す」という強い意志を伝えることが重要でした。「仮に会社の支援がなくとも挑戦する」という強い意志を示すだけでなく、「会社の支援があれば、より広いネットワークを築き、学びを最大化できる」という視点を加えることで、MBA取得が単なる個人のキャリアアップではなく、会社にとっても価値のある投資であると伝えることができると考えました。
「もう少し経験を積んでからでは?」
「まだ3年目で実務経験が浅いが、今すぐMBAに行く必要が本当にあるのか?」
「入社から短期間でも事業の中核となるプロジェクトで部門横断的な課題解決に取り組み、成果を出したと自負しています。経験の長さではなく、密度の濃い経験を積んでいることが重要だと考えています。より戦略的な意思決定を担うためにはMBAでの体系的な学びが必要です。早い段階で国際的な視点を養うことで、帰国後の成長速度も上がり、より長期的に会社へ貢献できると確信しています。」
「経験の年数」ではなく「どれだけの影響を会社に与えたか」を示すことが重要でした。単に年次の浅さを指摘された場合でも、具体的な実績を示し、今行くことの必然性を論理的に説明することで、納得感を持ってもらうことができました。
「MBAの学費を会社が負担するメリットは?」
「会社が多額の投資をする価値があるのか?回収できるのか?」
「MBAで得たスキルを活かし、会社のグローバル戦略や技術を海外展開するための架け橋になります。短期的な利益だけでなく、長期的に会社の競争力を高める役割を果たします。」
単なる理想論ではなく、具体的にどのように貢献するのかを明確に示すことで、説得力が増します。例えば、「MBAで学ぶ経営戦略やグローバルマーケティングの知見を活かし、海外市場での新規事業開発に貢献する」「競争優位性のある技術を現地ニーズに適応させ、収益モデルを構築する」など、より実践的な視点を加えることで、投資価値をより明確に伝えられます。
最終的に大切なのは、「投資回収」の視点を持ちつつも、それを超えて会社の未来をどう形作るかを示すこと。単なる費用ではなく、会社の持続的成長への投資であることを、説得力をもって伝えられるかが鍵となると思います。
「PhDに行けばいいじゃないか(当方が理系バックグラウンドのため)」
「あなたの専門性を深めるならPhDの方が適しているのでは?」
「PhDは専門性を極限まで高めるための学位であり、私の目指すキャリアとは異なります。私の目的は、技術とビジネスを結びつけ、事業戦略を推進することです。そのためには、PhDではなくMBAが最適な選択です。」
PhDとMBAの違いを明確にし、自分のキャリアビジョンに沿った選択であることを納得してもらう必要がありました。MBAは将来のキャリアを加速させるための最適な環境であると伝えることが、相手の納得感を得るポイントだと考えました。
熱意と論理の両立が突破のカギ
面接の中で感じたのは、「MBAに行きたい」という熱意だけでは不十分だということです。論理的な説明と、会社へのリターンを明確に示すことが求められました。 特に、MBAで得た知識や経験をどう活かすのかを具体的に語ることが、選考突破の決め手になったと感じています。
また、単に役員の質問に「正解を答える」のではなく、対話を通じて「なぜ自分はMBAが必要なのか」を共感してもらうことが重要でした。まさに「役員とのバトル」。冷や汗をかきながらも、最後には「そこまで言うなら頑張ってこい」と送り出してもらうことができました。
ついに正式に受験のスタートラインへ
二次面接を突破し、ついに正式にMBA受験のスタートラインに立つことができました。しかし、これはゴールではなく、むしろ本当の戦いの始まりでした。GMAT、エッセイ、面接……ここからが本番。
しかし、この二次面接を乗り越えたことで、「なぜMBAに行くのか?」という軸がさらに明確になり、自信を持って次のステップに進むことができました。もし今後MBAを目指す方がいるなら、この「なぜMBAか?」という問いに、徹底的に向き合うことが何よりも重要だと思います。
当時のことを思い出しながら記載していたら、想像以上に長くなってしまったので、社内選考内定後のプロセスはまた次回にお伝えします!
コメント